取り囲むスクリーン。ホログラムのような人々。
信号を待つ通りの向こうには、
帽子を取ったり取られたり戯れる小学生。
背筋の伸びた白髪の紳士。
連れ歩く二匹の小さな犬を、愛おしそうに見つめている。
私の犬が挨拶に寄っていき、少しの言葉を交わす。
続々と校舎から吐き出されてくる女子高生。
会話というよりは宣言のように、好きな歌手や手に入れた服のことについて、
弾ける情熱を放っている。
弾ける情熱を放っている。
群れの合間には、ひとりぽつんと歩く子もいて。
その蔭のある表情に、友達がいないのではないか、
学校が嫌なのではないかと胸の片隅で波が立つ。
学校が嫌なのではないかと胸の片隅で波が立つ。
小忙しい夕暮れ。流れを織りなす人々見ていると不意に、
“ここには、私しかいない”
“彼らは全部、私だ”
めくれ上がるような、生木が引き裂かれるような感覚がした。
めくれ上がるような、生木が引き裂かれるような感覚がした。
小さな頃から毎日毎日、何千何万個もの思いを描いてきた。
飛んでも飛んでも掴めなかったあの空の雲、
繋いだ手に伝わる好きな人の鼓動、
踏みにじられて胸に浮かべる殺意、
譲ってもらったことの恥かしさ、
飛んでも飛んでも掴めなかったあの空の雲、
繋いだ手に伝わる好きな人の鼓動、
踏みにじられて胸に浮かべる殺意、
譲ってもらったことの恥かしさ、
周りにうごめく人々はどこかの時点での私。
私が描いた一瞬、一コマを体現している。
360度私を取り囲むスクリーン。ホログラムのような人々。
360度私を取り囲むスクリーン。ホログラムのような人々。
全世界を敵視していた私の狂気が、吠えるのを止めた。