私にはあなたを助けることなどできません

改行もなく誤字が羅列されたメール。
母からだ。

腐りかけている女がイザナギを捕まえようとする
黄泉の国の場面が思い起こされた。


どれだけの間一緒に留まり、脱出を試みたことか。
何度あそこへ戻っては、手を引き、背負ったことか。

けれども彼女は出口に近付くと恐怖でパニックになり、
そこにいることこそが自分の天命と狂信にすがりつき、
助け出そうとする私を極悪人と呼ばわり、追い払った。


そしてまた憐みを誘うあの手この手で私をおびき寄せようとする。


即座に沸き起こる憐憫の情。
責任感や連帯感のようなものが続く。

そのまま、黙って、自分の心模様を見る。



私にはあなたを助けることなどできないのです。
どうか光の方へ出てきてください。



彼女が幸せに見えようと不幸に見えようと、
どのようにあるべきか押し付けることなどできるわけがない。


この場で祈ります。
私たちの本当の姿を見せてください。
この目が捉えている世界の奥にあるものを経験させてください。